仕事終わりにいつものカフェでコーヒーを飲んでいるとコール音が鳴った。
「社長、佐々木です。基地局がダウンしました。バックアップで動いてますが負荷が高いのであと数時間しか持ちません。バックアップがダウンすれば Y市全体の通信が遮断されます・・1次対応チームでは対処できません」
スマホが繋がりづらいのは、どうやらその影響らしい。数分でも遮断すればニュースとして報じられる障害となる。
障害が長引けば、その影響は広範囲に及び復旧までに相当の時間がかかることが多い。
コーヒーを一気に飲み干しタクシーで現場に向かう。窓から満月が見えた・・・ 今夜も長い夜になりそうだ(続く)
売上欲しさに既に受注してしまったらしい。時計は23時を回っている。誰かが小さく溜め息をするのが聴こえた・・今夜も長い夜になりそうだ(続く)
この男のせいで一体どれだけのエンジニアがここから去ったのだろうか...
「手練れが使う特注マシンか。。少しは楽しめそうだが、いつまでもつかな」
同時に大量のポートスキャンも仕掛けてきた。脆弱性を探りながら不正アクセスをする常套手段だった。
「さあどうする?」大声で笑った。FWやオートスケーラクラスタは鬼が無効にしたようだ。システムは不安定だった。電波品質が低下し一帯の通信に影響が出始めている。
抵抗値・伝送損失値・線路長値も確認したが原因になるような数値ではない。
回線帯域調整も必要なく、周囲に空港や送電線など外部要因になるような施設も見当たらない。
config(設定)異常はなく、ログ解析でも原因不明、しかし監視システムには特殊なエラーコードが赤く点灯する。
このままでは緊急通報・金融市場取引・日常生活も含めた通信が遮断され、大規模広域障害に繋がることになる。
原因不明の通信障害は熟練の技術者でも対処が困難となる。全員の視線が自分に向けられるのを感じた。
ポートリセットを1度行うが反応がない。リセットは3度までだ。それ以上はシステムがもたないだろう。
タイミングはシステムの動作を診ながら慎重に行う必要がある、心臓マッサージの電気ショックに相当する。
2度目も行う。反応がない。残り1発・・・緊張が走り周囲には大勢の人だかりが出来ていた。
「自分を信じろ」恩師の声が聴こえた気がした。タイミングを計り3発目を打った。直後システムは息を吹き返した。
通信は安定し一帯への影響は最小限で済んだ。周りから一斉に拍手が起こる。「プロフェッショナル」誰かが呟いた。
ビルを出るともうすっかり朝になっていた。携帯電話に伝言が残っている。
「代表、官公庁に納品したセキュリティ製品のバージョンアップを至急行って欲しいという依頼です!致命的脆弱性が見つかったんですが社内に誰も対応できる人がいなくて・・お願いできますか?」
誰かがやらねばシステムは止まる。システムが止まれば経済や社会生活も止まる。「システムを止めるな」駆け出しの頃云われた言葉を想い出す。タクシーに飛び乗ると窓の外には桜の花びらが舞っていた。
「お客さん徹夜明けかい?そういや昔この辺りで徹夜明けの若いエンジニアをよく乗せたよ。社長になったと聴いたから現場は引退してると思うけどね、たしかエースって呼ばれてたっけ。お客さんね、そのヒトにどこか似てるよ」
タクシーは桜並木をゆっくりと走り出した。少し眠ることにしよう。。今日も長い1日になりそうだ
※この作品を日本の重要社会インフラ基盤システムを支える全てのプロフェッショナルに捧げる
ミッドナイトサウナ、20代若僧の頃から通っている。高層階からベイブリッジが一望できる隠れ家のような存在だ。
会社経営方針などもこの場所で考えることが多い。新しい発想が生まれる特別な場所でもある。
この「隠れ家」に部下や友人を連れてきたことはない。お忍びで訪れる著名人もいるが大抵は皆1人だ。
サウナ発祥の地フィンランドでは精霊が宿るとされ2000年以上前から酷寒の過酷な暮らしを支えてきた歴史がある。
時計が深夜2時を回った頃に馴染みの顔が入ってきた。名前は知らないがここで会えば会釈をする間柄だった。
暗がりに照らされた表情がいつもより疲れて見える。暖炉の一番近くに静かに腰を下ろした。
お互い無言で深夜のベイブリッジを見つめていた。ブリッジを渡る車がマッチ箱にように見える。
ここに居ると時間が止まったように感じることがある。暖炉に水滴が落ち真っ白な蒸気が沸きあがる。
沸き上がった蒸気の香りが心地よかった。しばらくすると「お先に・・・」小さく呟いて出て行った。
さっきより表情が和らいで見えた。暖炉に落ちる水滴の音だけが静かに響いていた (続く)
一通のメールが届いていた。差出し人は大学時代の友人だった。
ある自治体関連部門で幹部になり、多忙な日々を送っていると聴いていた。
昔から頭の切れる男だった。「お前のチカラが借りたい...」唐突に会いたいと云ってくるのはあの頃と変わらない。
小さなバーに入るとカウンターでウィスキーを飲んでいた。隣には秘書とおぼしき女性が座っている。
「20年久りだな...」横目で見ながら笑った。グラスの氷が溶ける音がした。とても静かな夜だった (続く)
ジムを出ると高級車が停まっていた。運転手がドアの前に立ち、ある企業の役員の顔が窓越しに見えた。
待ち合わせの時間よりかなり早い到着だ。それだけ切迫しているということか・・・嫌な予感がした。
提供しているシステムがランサムウェア被害を受け、顧客情報と引き換えに多額の身代金を請求されているとの連絡があったのは昨日のことだった。
クラウドとオンプレシステムの連携に失敗し、バックアップからの切り戻しも難しい状況だと聴いていた。
「エース、何とかならんか」役員はかつての通り名を知る数少ない1人だった。遠くでセミの鳴く声が聴こえた (続く)
紹介したい若手がいますと地方議員関係者から聴かされたのは、ある会合の席での帰り際だった。
間もなく女性が現れた。10代後半~20代前半の学生に見える。細身だが意志の強そうな大きな瞳が印象的だった。
「伝説のエンジニアなんですよね!? 私を一流のエンジニアとしてデビューさせて下さい」
思わず苦笑いするしかなかった。「会社はもう辞めてきたんです」それを聴いて少し面食らった気がした。
「社長にプロデュースしていただいて1日でも早くエンジ二アとしてデビューするのが私の夢なんです」
「一流のエンジニアになってITのチカラで地域の活性化に貢献したいんです、お願いします!」
紹介者が不安気に遠くから見守っている。何らかのツテのある彼女に頼み込まれ、やむなく紹介したようだ。
個人の小さな損得勘定しか考えない人材もいる中、彼女からは社会貢献したいという想いが伝わってきた気がした。
20年以上前の未熟で世間知らずな若僧の頃は同じ夢を追っていた。あの頃の懐かしい自分に彼女が重なって見えた。
頷くとこぼれるような笑顔を返してくる。これがのちに幹部となり活躍する事になる若手との出会いだった (続く)
首都高を走行中に万博開催が近いことを知らせる放送が流れた。
数年前のオリンピック同様にサイバーセキュリティ実装が必要になるが、世界情勢がより不安定になっているため、今回もサイバー空間での熾烈な攻防が予想される。
日本の重要インフラシステム同様に、国家の威信をかけた国際大会は標的になりやすく、実績のあるセキュリティエンジ二アには各方面から支援要請の声がかかる。
最近は組織的サイバー犯罪だけではく、生成AIを悪用することで敷居が下がり、個人でセキュリティコンプライアンス違反を犯しサイバー犯罪に繋がるケースも増加傾向にある。
ITの発展は社会に恩恵をもたらすが、技術を悪用して犯罪に手を染める再犯者もいつの時代も後を絶たない。
IT産業の一端を担うプロとして、サイバー犯罪阻止と国家プロジェクトの成功はマスト要件となる。今回の支援要請もハードなプロジェクトになりそうだ。
「IT技術の進化はヒトを幸せにも不幸にもする。俺にはもう余り時間がない。若僧、お前はITで日本に貢献しろ」
高層ビルの夜景が見えてくる。かつて託された想いは今も胸で響いている。アクセルを強く踏み込んだ (続く)
ある上場企業トップからの招待状が届いていた。一般には流通しないシークレット案件だ。
官民一体の巨額長期プロジェクトで、腕利きのコンサルタント兼エンジニアの参画を募っているという内容だった。
「四天王枠として出るんだろ?」 古い付き合いの山崎がダージリンに檸檬を入れながら云う。
関東四天王はある大企業グループ社内で使用されている隠語で、腕利きの外注コンサル/エンジニアへの称号だ。
関西三巨頭という称号も存在することは聴いていたが、億単位の報酬でなければ動かないという噂だった。
今回は四天王・三巨頭の7名が一堂に会し、受注の可否について調整して欲しいということだった。
「7人が一堂に集まるなんて想像しただけでも圧巻な光景だな。オレも現役だったら参加したかったよ」
彼もかつてコンサルタント兼エンジニアだったが現場を引退し会社経営に専念している、元四天王の1人だった。
20ヵ国語を自在に操り、医学・国際法・会計分野に精通し、高級基幹システム SAP/ERP・HANA製品も得意とした。
三巨頭か・・どんなコンサルタントやエンジニアなんだろう。噂ではキャリア官僚出身のエリートもいるらしい。
7人に共通しているのは、全員百戦練磨のコンサルタント兼エンジニアであると同時に会社経営者でもあることだ。
待合わせ場所は都内料亭になっている。まずは会ってみるか・・・紅茶の檸檬が黄色く鮮やかに光っていた (続く)
企業情報 |
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株式会社ISEエンジニアリング不動産 |
代表取締役/統括本部長:伊勢田 洋一 逗子横須賀IT産業推進協会 専務理事 葉山鎌倉ITベンチャー企業支援協会 会長 東京神奈川デジタル人材育成支援協会主幹 日本DX推進協議会議長/主席アドバイザー CSIRT/サイバー緊急対応チーム特別顧問 (協会ポータルサイト 2024年度順次公開) |
創立時資本金:1,000,000円 ※2024年1月 2,000,000円増資完了 ※2024年9月 7,000,000円追加増資 ※2025年3月 20,000,000円追加増資 ※2025年4月 グループ傘下事業経営統合 |
事業内容: ・地域IT産業促進/システム開発構築支援 ・IT製品プロモーション販売/代理店業務 ・若年層デジタル人材育成および就業促進 ・国家主要インフラ基盤事業サイバー防衛 ・経営コンサル/DX推進及び社会貢献事業 ・医大生/海上自衛隊員向け不動産運営 他 |
事業部: CSIRT事業部サイバー犯罪特別対策室 CSIRT事業部サイバーテロ特別対策室 SOC体制構築コンサルティング事業部 基幹システムコンサルティング事業部 基幹産業活性・企業誘致推進事業部 地域スマートシティ構想推進事業部 地域創成5ヵ年計画/再開発事業部 国際サイバーセキュリティ事業部 社会インフラ基盤保守事業部 ChatGPT基盤DX推進事業部 RPA連携基盤DX推進事業部 官公庁システム運用事業部 AI・IoT・IOC推進事業部 アジャイル開発事業部 クラウド推進事業部 テナント運営事業部 SES法人営業部 M&A交渉戦略室 公益財団設立準備室 地方創生推進社長室 ビジネス交流会主催室 SmartPage代理店事業部 SKYSEAプロモーション事業部 地域創成eスポーツゲーム主催室 デジタル人材育成/採用支援事業部 IT医療事業・IT介護事業参画準備室 クラウドファンディング公募企画室 他 |
従業員数:250名(所属フリーランス含む) |
取引銀行:住信SBIネット銀行 GMOあおぞらネット銀行 |
本店所在地 |
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〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-19-15 宮益坂ビルディング609(本店) 所属:東京商工会議所・横浜商工会議所 地域商工会議所IT経営者部会など 2025年4月1日 六本木移転予定: グループ傘下事業経営統合による本社移転 〒231-0062 神奈川県横浜市中区桜木町1-1-7 ヒューリックみなとみらい10F(支店) その他オフィス: 恵比寿・品川・青山・日比谷・汐留など |
グループ会社 (設立準備含む) |
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・株式会社ISEデジタル医療福祉サービス ・株式会社ISEデジタル教育ビジネス ・株式会社ISEデジタル都市開発 ・公益財団法人 ISE日本財団 他 ※詳細:2024年以降順次掲載 |
姉妹サイトサービス |
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ISEデジタル教育サービス https://www.ise-socialservice.net |
税務・労務・法務など提携先 |
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税理士法人/弁護士団体/各種協会など |
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